日本ロールシャッハ学会 第24回大会

プログラム概要

(1)ミニレクチャー 11月14日(土)15:30~16:50

以下のタイトルと講師陣によるミニレクチャーを開催いたします。当日の先着順受付ですので,余裕をもって会場へお越し下さい。

A.「古くて新しいロールシャッハ法の基礎研究」

講師:岩佐和典(就実大学) 定員:20名(予定)

ロールシャッハ法の基礎研究とは何か。ロールシャッハ法は査定器具であり臨床的方法なので,臨床事例と対照可能な反応リストとか,器具・方法としての性質とか,そういった「ロールシャッハ法そのもの」に関する研究が真っ先に思い浮かぶかもしれない。一方で,ロールシャッハ法の目的は,概して,対象となる人間を理解することだから,我々の持つ人間観とか,人間に関する科学的知識なんかも,参照可能な枠組みとして有用だろう。そうした諸々の知見をどこに求めるか考えるとき,その出処を「ロールシャッハ法そのもの」の研究に限定する道理は無い。ロールシャッハ法が人間の理解を目指すのならば,むしろその基礎研究は「人間そのもの」の研究を内含する必要があるのではないか。さらに,そうした研究によって拡張された人間理解の枠組みを,どのようにしてロールシャッハ法に実装すれば良いのか。……といった,ロールシャッハ法の基礎研究にまつわる問いについて,主に心理学の立場から考えます。

B.「現代のS-HTPにおける描画特徴−対象者の社会性に着目して−」

講師:纐纈千晶(東海学院大学) 定員:20名(予定)

S-HTPは1枚の紙に,家と木と人を課題として,他をどのように描くかは対象者の自由に任せる描画法です。実施は簡便で対象者の負担は少ないですが,自己イメージ,不安や抑うつ傾向,心の健康性など得られる情報量が多いという利点があります。
今回は受講者自身にS-HTPを体験いただいてから,実施方法,絵の分析と解釈,および対象者へのフィードバックまでを紹介します。
S-HTPは精神医療領域で,ロールシャッハ法の実施が難しい精神障害者に代替として用いられ,理論よりも実践研究の蓄積によって発展しました。そのため,体系的な解釈仮説や描画指標が十分でないという側面もありますが,本レクチャーでは,纐纈(2014)の描画指標「異質表現カテゴリー」による客観的な絵の評定についての解説と,対象者の社会性に着目した考察を行います。

C.「バウムテストの足もとを見なおす〜その1枚のバウムのための実験・発達・歴史という視点〜」

講師:佐渡忠洋(常葉大学) 定員:30名(予定)

バウムテスト,それは日本でもっとも活用頻度の高く,どの領域にも開かれた技法。医療ではサイコロジストが経営に貢献できる貴重なツールの1つ。なによりバウムは,描き手の「何らかの」姿をときに厳かに・vividに・暗示的に,ときに簡素に顕現せしめる。おおくの先生方が,その「一本の木」をできるかぎり理解し,臨床に活かそうとされている。
今回話者となった私自身もそうありたいと考えている。本レクチャーでは,「実験・発達・歴史」の資料を使いながら,バウムを味わうわれわれの視点それ自体の見なおしを試みたい――したがって「AならBだ」という解釈法ではない。お話する内容は私の拙い歩み(研究と臨床)の露呈になるかもしれないが,ただし内実は,常にそれぞれが思い浮かべる1枚のバウム理解を刺激するものとしたい。イメージを共有して話を進めるために,関係するバウムは時間の許すかぎり多く提示する予定である。

D.「TATを取り入れた臨床判断の実際−TATの分析・解釈の理論から臨床への適用まで−」

講師:土屋マチ(山梨英和大学) 定員:20名(予定)

TATプロトコルは,各図版刺激に対する連想であり,20枚の図版に対する反応は,Christopher Bollas(2002)的に言うならば,被検査者の思考の連鎖(trains of thought) のプロセスである。そこにはその被検査者の欲望,欲求,記憶,情緒的生活に起因するものなどが反映されていると考えられ,TAT図版から何を連想するかという,思考の繋がりとして捉えられる。私はこのような基本的な立場から,TATプロトコルを分析・解釈している。具体的には,分析・解釈は12の分析視点,解釈・構造化については8つの視点から行っている。
ミニレクチャー当日は,実際の臨床事例のTATプロトコルの分析・解釈を通してRorschach法とは異なるTATで感じ取られる心の世界を,皆さんと一緒に考えてみたいと思っています。

(2)研究発表 11月14日(土) ①14:00~15:30 ②16:50~18:10

(3)特別講演 11月15日(日)10:00~11:30

演題
「現象学的な質的研究の現在」
講演者
村上靖彦(大阪大学)
司会
内田裕之(東海学院大学)

<講演概要>
現象学は古くはアルフレッド・シュッツが社会学の方法論として使い始めたのを嚆矢として経験科学における方法論として使われてきた。とりわけ教育学などでの質的研究の方法論としてアマデオ・ジオルジが整理して以降,一般的なものになった。日本では2000年代に入って西村ユミの『語りかける身体』(2001/2018)をきっかけとして,まず看護の世界でそして今では広い分野の質的研究の方法論として現象学が用いられるようになってきた。西村によって現象学を用いた研究は方法論として大きく姿を変えた。フッサールなど過去の学者の概念を表面的に用いることを「現象学」と呼ぶのではなく,研究を遂行する姿勢において真に現象学的になったのである。
私自身は2003年から(西村の仕事は知らずに)小児科での自閉症の研究を行ったあと,2011年より西村の影響を受けて看護師の聞き取りを始めるとともに,この方法論について考え始めた。
今回は,私自身が行ってきたいくつかの研究(とりわけ看護師の実践の研究と,貧困地区の子育て支援の研究)を例に取り,データに対して内在的に分析することと語られた実践が背景に抱える構造を描き出すことという2点について,方法論上の要点を示していきたい。

(4)シンポジウム 11月15日(日)14:00~17:00

テーマ
「ロールシャッハ法にみる『適応』-再考-」
シンポジスト
大矢寿美子(金沢工業大学) 袴田雅大(きまたクリニック) 明翫光宜(中京大学)
指定討論
小川俊樹(本学会長, 放送大学)
司会
服部信太郎(公益社団法人岐阜病院) 人見健太郎(みとカウンセリングルームどんぐり)

<企画趣旨>
ロールシャッハの学習を始めた初心者の場合,まずクライエントを査定する際に,F+%,P反応,MやFCの数などサインアプローチからクライエントの状態像をつかもうとする。そして,たいていは形体水準の低さやP反応の乏しさなどのように,クライエントの「適応がよくない」というネガティヴな面を見ることから学習が始まる。
こうしたサインアプローチの時期を経て,自分なりにテストの結果と臨床像との対応・照合を模索するようになると,あらためて「適応」という問題を掘り下げて考えていく段階がやがて訪れる。どのような反応を示すようになると問題ある状態から改善・回復したと言えるのか,またテスト上の特徴をふまえてどう関わることがクライエントの援助につながるのか,さまざまな情報を駆使してクライエントの適応の問題をよりていねいに考えるようになっていくことが期待される。
ところで,そもそも適応とは何か?たとえば,院内適応という言葉があるように,ある程度,安定した状態を指すこともあれば,社会適応という広い視点でとらえることもある。とくに,ロールシャッハテストを通して「適応(の可能性をみる)」とはどういうことなのか?この問題は十分に検討に値するが,あまり議論の対象となることはない。
ロールシャッハ上には健全な面も病的な面も映し出されるのだが,とかく病的な面がクローズアップされがちで,従来より健全な面にも目を向けることが重要であるとは言われてきている。今回のシンポジウムでは,この問題に改めて焦点をあててみたい。
そこで今回は経験豊かなロールシャッハワーカーをシンポジストに迎え,適応の問題を再検討してみたい。フロアからの活発な意見や質疑応答を期待する。

(5)理事会 11月14日(土)

(旧理事会)12:40~14:00 (新理事会)15:30~16:50

(6)総会 11月15日(日)13:00~13:40

(7)懇親会 11月14日(土)18:30~20:00

会場:ひだホテルプラザ
*皆様のご参加を心よりお待ちしております。会場の関係上,できるだけご予約をお願いいたします。

事務局
日本ロールシャッハ学会第24回大会準備委員会
〒501-1193 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学教育学部伊藤研究室
E-mail:takayamaror24[at]gmail.com ※[at]を@に置き換えてください
Copyright © 日本ロールシャッハ学会 第24回大会 All Rights Reserved.
ページの先頭へ戻る